毎日仕事をし、ランチの時間は与えられず、半ダースのビールを飲み、やって来た女と過ごす。ぶっ飛んだプロットがあるわけでも、奇行じみたアウトロウも見当たらない。それどころか大量消費が美徳とされる世界で失われつつある人間性が主人公から滲み出ている。それは対価として人に温もりを求める弱さとも受け止められよう。
アスファルトにこびりついた蛙のような視線を持って淡々と思考を言葉に変換して行ったような文章は、それが坂口緑によるものなのか、原書を読む気はないので俺にはずっとわからない。なにはともあれ大したパルプだ。
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