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チョコレート事情

1.味覚のちがい
日本でのチョコレートについて考えてみますと大きく分けて二つに分かれると思います。一つは、コンビニなどで売られている大手菓子メーカーが製造している物と、もう一つは専門店で売られているトリュフ類に分けられると思います。
フランスに比べて、この専門店の事情にずいぶん違いがあります。
フランス人にとってチョコレートは大人から子供まで楽しめる高級な食べ物としてプレゼントなどによく使われますが、日本でのチョコレートは子供の甘いおやつとして考えられがちです。
ミルクチョコレートの消費の多い日本に比べ、ヨーロッパではセミスイートやスイートチョコレートが大人の人によく好まれる為、たくさんの製品が並べられています。これは、チョコレート本来の味や特長がわかりやすい事とコーヒーの苦味、オレンジマーマレードの苦味、ビターアマンドの苦味などと同様にチョコレートの苦味は、欧米人の好む味覚によるところだと思います。

2.トリュフ
専門店で売られている小さいチョコレートを、トリュフと呼ばれている事が多いですが、これは、きのこのトリュフからとったチョコレートの形の名前です。四角や円、ハートなどはトリュフとは呼ばず、それぞれの名前があります。フランスでは、ボンボンショコラ。ドイツ系では、プラリネと呼ばれることが多いです。
トリュフの中身には、ガナッシュ(チョコレートと生クリームを混ぜたもの)を使う事が多く、日本人好みの柔らかく滑らかな触感になります。
他の形には、オレンジ、レーズン、チェリ-などのドライフルーツやアマンド、クルミなどのナッツやその加工品を使います。その為に、トリュフに比べ他の形の物は、消費に 1/2~3/4位の違いがあります。これは宣伝や味覚の違い、と共に作り手にも責任があると思います。

3.生チョコレート①
日本では、ここ5、6年前から「何々の石だたみ」と言われる「生チョコレート」がブームになっています。この小さいチョコレートは、スイスのある所でスペシャリテ(パベ敷き石)として売られているものを日本のある会社が、同様に売り出したところ(実際はずいぶん違います)、売れ行きがよいので、材料業者が広め始め色々なお店で売られる様に成り、ブームが起きたのではないかと思われます。
なぜこの「生チョコレート」がブームになったかを考えてみたいと思います。
日本人は、なぜか「新鮮」とか「生」と言う言葉に弱いような気がします。何を持って「生」と言うのでしょうか?「生チョコレート」と「トリュフ」の違いを考えて見ますと「生チョコレート」は、いわいるガナッシュ(チョコレートと生クリームを混ぜたもの)をカットして、ココアにまぶした物をそのまま商品にした物です。これは、口あたりは滑らかですが時間が経つにつれて水分の蒸発と共に結晶が大きくなり、舌触りや香りが悪くなってきます。その為に冷凍保存する事がおおい様です。
この事を「生」と考えているのでしょうか?「トリュフ」は、いわゆるガナッシュ(チョコレートと生クリームを混ぜたもの)にチョコレートで被覆した物です。これは、水分や香りを中にとじこめ、美味しい状態を保つ為に行ないます。
また味や柔らかい物など、バラエティーに富んだチョコレートを作る事が出来ます。しかし硬いチョコレートで覆いますので、「生チョコレート」に比べ、最初の口あたりは、滑らかではないですが、味や香りに富んでいると思われます。
このように「生」と言う概念の違いから、柔らかいチョコレートは生のチョコレート、硬いチョコレートは、普通のチョコレートと考えられてしまうとしたら、残念に思います。チョコレートの本来の美味しさは、何も入らない硬いチョコレートの中にあると思います。

4.生チョコレート②
今度は、作り手から考えてみたいと思います。
チョコレートの製品を作る上で、硬いチョコレートで被覆する事は温度調整の技術や時間などを伴いますが、「生チョコレート」はそれがないので、効率的に仕事ができます。また材料原価から考えますと、チョコレートは、材料の中で一番高価な物で、生クリームに比べ1.5倍~2倍位します。柔らかい物を作ろうと思うとだんだん原価が下がってきます。
その様に、「生チョコレート」は、トリュフに比べ容易に、効率的に出来る為、割安感があり、色々なお店で取り扱う様になりました。また、口どけの良さなどから日本人に受け入れられていったのではないかと思われます。しかし「チョコレート」と言う物を考えた時、「生チョコレート」は一部の製品でしかないので、トリュフやボンボンショコラなどの
物を紹介しながら、チョコレートの美味しさを広めて行く役目が菓子職人にはあると思います。が、残念な事に技術的な問題などの為、日本では満足して頂けない様な製品が見られるのが、現状です。菓子職人として、お客様に満足して頂ける様、努めて行きたいと思っております。

http://www.leblanc.co.jp/photo/chocolat/w-chocolat.htm

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テーマの著者 Anders Norén